この子のハタチのお祝いに

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東京都内某所にある古びたビルの3階にある喫茶店。名前を「み~な」という。 ビターチョコのほろ苦いショートケーキとコピ・ルアクのコーヒーが絶品だと言われている。 この店が喫茶店なのは午前11時から午後5時までの6時間。 午後9時から午前2時まではケーキも出るバーになる。 もっともこのことを知っているのはこの店の常連か誘蛾灯の明りに誘われるように飛び込んできた物好きだけである。 タン 不意に店の外窓をノックしたものがある。 雨だ。 カウンターでグラスを磨いていたマスターが視線を外に向ける。 「なに?」 俺の問いにマスターは静かな微笑を湛える。 何か特異な人が来るんですね・・・ワカリマス。 シャン シャン シャン 店の外から聞こえるはずのない鈴の音・・・ いや、もしかすると俺の知らない常連の修験行者が来たのかもしれ・・・ないない。もう午前を回ってるだろ。 店の入り口にある巨大な砂時計をみる。この店で時計を見るのは野暮なのだ。 「いいなぁ・・・」 思わずため息が出る。 真っ黒な砂の中たまにキラキラと光る金砂が流れ落ちる光景が魅惑の3時間が計れるという特注の砂時計。 ガラス上部にたっぷりと砂が詰まっていてサラサラと落ちている。砂が上にタップリということは開店してから一度ひっくり返してるということだ。 あ、星が流れた・・・ 少し視線をずらすと砂時計の近くでショットグラスを煽っている女性がいる。 年の頃なら三十半ば整った顔に腰まである長い黒髪。確か結構有名な女優さん。 オフや仕事が早く終わった時に砂時計をひっくり返すためだけに来てるというから多分彼女が砂時計をひっくり返したのだ。 シャン 店の扉の前で鈴の音が止まる。 ぎぃ・・・カラン ドアベルが澄んだ音を鳴らした。
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