この子のハタチのお祝いに

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「構わないかな?」 顔を覗かせたのは彫りの深い顔にスッキリと通った鼻筋。撫で付けられたオールバックの赤い髪に灰色の瞳。 ガタイのいい体を古風なトレンチコートに包み込んだ・・・スーパーマン? いやいや日本語話してるだろ・・・ マスターが頷くのを見て男は店に入りコートを脱ぎハンガーに吊る。 どう見ても軍服。徽章とかないけど第二次大戦のイギリス空軍だよなあれは。しかもどうみてもコスプレには見えない・・・ ぎぃ・・・カラン 男に続いて赤銅色の髪を頭の上にお団子状に纏めた左がグレーで右がブルーのオッドアイの20代半ばの紺のスーツ姿のOL。 そして腰にまで及ぶ金髪に碧眼の・・・十代後半から二十代の女の子が入ってくる。 「思った以上に素晴らしいじゃないかアン」 男は二番目に入って来た女性を見て野太い声で笑う。 「マスター・・・」 男はマスターの背後にある棚をざっと眺めある一点に視線を止める。 「マッカラン1939があるのか」 あの外人さんこの店のレア酒に一瞬で気付いたよ・・・すごいな。 「キープできるか?」 うわぁとんでもないこと言いだした確か90万超えの逸品だろ。 「できます」 払えますかという目はしてない。 その辺はマスターもプロか。 「では」 外人さん懐からカードケースを取り出してマスターにカードを渡す。 うはっブラックカードだよどんなお大臣さんだ。 「では」 外人さんはマスター差し出された書類に優雅にペンを走らせる。 「これは光栄ですMr.スティツ・ジャック」 ぶっ 思わず飲んでいた酒を吹いてしまう。 サインに目を闘したマスターが物凄く小さい声で呟いたのがバッチリ聞こえてしまったからだ。 スティツ・ジャックといえば現在大ヒットしている日本の漫画を原作にしたアクションヒーロー映画でイギリス出身のヒーローを演じた俳優だ。 そうえば映画の宣伝を兼ねて日本人のフィアンセと共に日本に来たというニュースがあったな。 ということは、もしかして金髪の女の子ってそのアクションヒーロー映画のヒロインを演じてた女優さんじゃないか。 いやいやそうじゃなくってどういう光景ですかこれ? マスターがさり気なくこちらに視線を寄越す。 ええ解ってます。他言無用が常連のルール。
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