納豆とバニラ

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店を出ると、正人の右手はシュークリームの箱、左手は私の手を握っていた。 「なあ、何でここで買い物したん?」 「んー、初心を忘れないように?」 何となくわかる気がして、私も彼の手をギュッと握った。 今日も、その手は温かい。 また電車に乗って、最寄り駅まで帰ってきた。 横断歩道を渡って、そのまままっすぐ歩きかける正人に、私は声をかけた。 「私も、寄りたい所、あるねん」 と、開店したスーパーを指す。 「え?何を買うの?」 「納豆」 私も、今日の気持ちを忘れないようにしよう。 私たちは、片方にバニラの香り、もう片方に納豆を下げて、帰路についた。 終わり
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