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猫になりたいと思っていた。
気ままに生きているように見えたから。媚びないところがいい。
「この領収書、捨てちゃまずいんじゃないの?」
「ん? ああ……そうだな」
舌打ちは、自分に対して。私にはしない。
厳つい外見と違い、この人は存外礼儀を知っている。
「まあ、こっちに置いておきゃいいや」
「なくしてしまわない?」
「まあな。毎年、税理士に経費が少なすぎるんじゃないか、領収書なくしてるだろって怒られる」
「……いい先生ね」
悪戯がばれた少年のように笑う。
違った。マナーの知識を知ってるんじゃない。本質が優しいから、咄嗟に思いやりある行動が取れるのだ。
知識はあっても思いやりは無くしてきた私は、雑に放っておかれそうな領収書を奪う。
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