猫になりたい

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「作曲家のモリさんが企画してるみたいで。詳しいことは、まだ全然分からないんすけど」 「へえ、いいね。マリアのメインは、やっぱりモリさんだもんね」 マリアのシングル曲の大半は、彼が制作していた。 「曲ができすぎて困ってるらしいですよ」 「天才はすげえな」 モリの新曲なら、楽しみだ。 レコーディングも無事に終わり、いい気分で家に帰ろうとしたところ、再度そのスタッフに呼び止められた。 「あ、そうだ。良かったら、これ持ってってください。猫ちゃんに」 「え?」 ペット用の猫じゃらしだった。ピンクの柄に、白い羽根がついている。ふわふわだ。 「奥さんとホームセンター行ったとき、ついでについ買っちゃったんです。あ、うちも猫飼ってるんすよ」 満面の笑みを浮かべる彼に返すのも忍びなく、持って帰った。徹夜明けの朝、というには既に日は高く、説明だか言い訳だかをする気力は残っていなかった。勤め人のような時間帯にする仕事も増えたが、大半は夜に稼動する職種だ。
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