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三階建てに地下一階。建坪は小さく、豪邸とは言えないが、スタジオめいたものも置けたし、機材も増やせたので満足している我が家の三階に猫はいた。
「なんでフローリングで寝てるかね」
朝に一度起きたのだろう。日なたを探して移動する本物の猫のように、小さなラグの上に毛布をくるまって寝ている。
荷物を下ろし、カバンを開けると、最初に猫じゃらしが出てきた。
無防備な頬をつつこうとしてやめる。
ついさっきしまったばかりのギターをケースから取り出し、指を弾く。
久しぶりに曲を作ってみるのもいいかもしれない。自分のバンドは、長く持っていなかったし、ソロ活動もしていなかったから、めっきりさぼっていたが、例えばそう、子守唄とか。
欠伸をした猫が、白いふわふわした羽根を目で追いながらも、またまどろむような、のどかな曲を一つ、ゆっくり作ってみるのも悪くない。
日なたに似合う曲を。
- 終 -
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