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そろそろこの話も終わりに近付いてきているね。
察しの良い君の事だから、気が付いているかな?
そうなんだ。僕もそろそろ新しい土地へ行く事になったのだよ。
契約社員の契約が満了になってね。
今度は別の土地で働く事にしたのだよ。
ここ数ヶ月、君とは色々と思い出を作れてとても良かった。
最後の最後にこんな事を言われても、君は困惑するだろうね。
いつになっても、君には僕の友でいて欲しいと思ったんだ。
こう思うのは我儘かな? 君は、僕の中では特別なのさ。
そういう風に思える友に出会えたのが、この土地での大きな収穫になるね。
*
仕事場が変わること、もっと早く伝えるべきだったね。
なかなか言い出せなかったのは、僕の性格のせいだ。
君はきっと色々気を遣って、僕と接する様になるだろうと思ってね。
最後まで、自然体の君と思い出を作っておきたかったのさ。
これは僕の我儘だ。怒られたって仕方ない。
怒りはしないが、寂しくなるって?
はは、そう思って貰えるなんて嬉しいな。
ここは喜ぶべきところで良いのだよね?
僕も、君となかななか会えなくなるのは寂しいさ。
それでも、君が友で居てくれるから、僕は新しい土地でもやっていけそうだよ。
*
君とこうして色々と話すようになったのは、いつからだっただろうね。
まだ仕事に不慣れな僕に、とても親切にしてくれたのを今でも覚えているよ。
あの時は、本当に助かったよ。どうもありがとう。
ああ、君も段々話が分かってきたようだね。そんな目をしている。
僕に質問があるって? ああ、良いよ。
本当の名前を教えて欲しいって? はは、君はそこまで見通したかい。
大したものだね、流石僕の友だ。
真の名前を人間に教えるのは、僕も初めてだなあ。
ああ、勿論教えるよ。気にしないでおくれよ。
僕の本当の名前はね――。
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