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生きてたら、自分じゃどうにもできないことばっかり起きる。だから無駄に熱くなったり憤ったり、そういうの全部無駄。それが信条で、極力面倒に関わることは避けてきた。その対策は幸いにもうまく機能して、少なくともここ数年は穏やかな日々を送っていたのだ。
――なのに、なんだよ。
複雑に絡み合った寄生植物の蔓をひとかたまりにして胸の奥につっこまれたら、きっとこんなごわごわした不快感があるだろう。なのに目をそらせないその先で、見慣れた金髪頭が苦しげに前後している。前髪と後ろ頭をひっつかんで前後〈させている〉のは、見慣れない青年だった。
今日は学園祭で、学外の人間も出入りがある。だから、どうも大学生ふうの男が学校の構内にいるのも、それだけならなにも不思議じゃない。
だけど――
「ほら、歯ァ立てんなよ、つばさ」
なんで義理の弟になったばっかりの奴が、イラマさせられてるとこなんて目撃しなくちゃなんねーの。
「お相手にもお子さんがいてね。つばさ君ていうんだけど。可愛くていい子だよ。体は那智よりちょっと小さいけど、同い年だし、すぐ仲良く出来るんじゃないかな」
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