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約束の1週間が過ぎる頃には、お兄さんから玉を撞く許可も出た。
『ひたすら真っ直ぐ。これが10球連続で入るようになるまで。』
センターショットと言って、ビリヤードの世界では、有名な練習方法らしい。
ただただ真っ直ぐ。
ひたすら真っ直ぐ。
テーブルの中央に的玉を置き、それをコーナーポケットに入れる練習。
ところがこれが難しい。
10球連続どころか、1球だって入らない。
その間、お兄さんからは何もアドバイスは無い。
『狙った所に撞けなきゃ、教える教えない以前の問題だ。ま…つまんないって思うなら辞めろ。そんな奴に教える事は何も無い。』
最初にそう言われただけだ。
だが僕は、つまらないなんて少しも思わなかった。
入らないのは悔しいが、何故入らないのか?それを考えながら撞くのが楽しくて仕方なかった。
『お前、外して喜んでんのはおかしいからな。変な奴め…』
お兄さんにはそう言われたが、楽しいのだから仕方ない。
10球連続で入ったのは、教わりだして1ヶ月経った頃だった。
その頃には、常連さんたちにも顔と名前を覚えられていた。
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