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そのお兄さんはと言うと、京子ちゃんが練習の虫と言うだけあり、ひたすら黙々と練習しているのだが…
そんな話しを聞いてしまったからか、余計格好良く見えてしまう。
お兄さんの操る玉は、まるで玉自身が意思を持っているかの如く、シュルシュルと小さな音を出して回転し、測ったように次の玉が狙いやすい場所に止まる。
進み…戻り…時にはカーブして…まるで何かの曲芸を見せられているようだ。
見ているだけで胸が高鳴る。
僕もあんな風に撞けるようになりたいと…
『…見てるだけじゃ上手くならないよ。教えて貰ったら?』
どれだけ物欲しそうに見ていたのか…
受付の千尋さんと呼ばれた方が、僕達にサービスでコーラを出してくれながら、そう話し掛けてくれた。
『あ!でも…邪魔しちゃ悪いし…僕なんかじゃとてもあんな風には…』
僕は今まで、まともにスポーツなんかやった事が無い。
良い学校に入って、良い会社に入るのが幸せなんだと思って生きてきた。
だから当然、趣味も無い。
同級生の女の子達にも、さぞやつまらない奴だと思われているだろう。
京子ちゃんや栗原さんと話すようになったのだって、友人に社交的な上田がいたからだ。
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