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私の住むこの街には、一件の本屋がある。その本屋は老夫婦が経営していて、どこか時間を忘れさせてくれる、他の本屋にはない空気が私のその本屋を気に入っている理由だ。
その空気を作り出しているのは間違いなく、店主である老夫婦だろう。彼らはいつも笑顔で客に接し、そしてお客さんを笑顔にすることが生きがいだと語る人。
だからこそ時間の流れが緩やかに感じるのかもしれない。
そんな本屋に、悲劇が襲いかかった。店主のおばあさんが亡くなったのだ。
彼女はいつも元気で、病気にもかからない、元気だけが取得だと笑っていた。
そんなおばあさんだったから、私はとても驚いた。
なぜなら彼女は病気で亡くなったとのことだったからだ。
私はとても奇妙な感覚に囚われた。
確かに元気だからといって、病気にかからない保証はどこにもない。この違和感が勘違いであることを祈ろう。
おばあさんが亡くなっても、おじいさんは今まで通り本屋を開店させていた。
私は仕事帰りに寄るのが大半で、今日もかねてから欲しいと思っていた本を手に入れることができ 、気分は良かった。
「お嬢さん、お話があります」
急におじいさんに呼び止められ、私は足を止めた。
「私の家内が亡くなったのはご存知だと思いますが、そのあと私の体調が悪くなってしまい、この書店を閉めようと思い立ちました」
私は急に胸が締め付けられるような悲しさに襲われた。
「お嬢さんは、ずっとこの書店に来てくださいましたね。本当に感謝しています。お嬢さん、どうかお元気で」
おじいさんは私に礼を言い、笑顔を残して奥の部屋へと消えた。
おじいさんの営む書店は、その言葉通り翌日から閉店していた。寂しい気持ちが、あの書店がないという事実が、私の毎日をモノトーンに変えた。
しばらく書店を眺めていると、おじいさんが出てきた。
その手にはなにやらゴミ袋が握られている。そのゴミ袋は黒い色で、見た限り重そうだ。
おじいさんは私に気付いていない。そのままおじいさんはゴミステーションのほうへと歩いていく。
あのゴミ袋の中身は一体なんだろう。私はそれが気になった。
だから私は大変勝手ながら仕事を休んだ。
そしておじいさんの『秘密』を知ってしまったのだ。
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