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「おまえさぁ、彼女でもできた?」
次の講義までの待ち時間、学食の隅でクソ不味いコーヒーを啜っている最中、 突然の秀人の言葉に、おもわず吹き出しそうになった。
「・・・・なんだよ、急に」
口元を拭いながら、眺めていた本のページを確認する。
図書館で借りた本だけに、コーヒーの染みなんてつけたら洒落にならん。
「いやさ、最近おまえつき合い悪いじゃん?」
「そ、そう?」
「それに最近やたらとメールしてない?俺、自分がメール魔だって自覚はあったんだけど、最近じゃ雅通に負けてる」
「・・・・き、気のせいだろ」
「んなわけねーじゃん。それに合コンだって全然参加しないじゃんか」
「そ、そうだっけ?」
ヤバイ。
そろそろ感づかれたか?
合コンに参加しないのは、もちろん圭輔に止められてるからで。
べつに圭輔の言うことを訊く義理なんてものはないはずなんだけど、 なんていうか・・・・逆らったら身の危険を感じるというかなんというか。
それにたとえ隠れて合コンに参加したとしても、きっと・・・・いや、必ず圭輔にはバレるだろう。
圭輔に俺の嘘が通用するとは思えないし。
それにバレたあとのことを考えると、恐ろしくて合コンになんていけたもんじゃないっつーの。
「で?どうなのよ?いるなら紹介しろよな」
「い、いねーよ」
「ホントかよ」
「ホントだって」
あんなデカイ彼女がいて堪るか。
読む気の失せた本を鞄にしまい、ゴホンと咳払いを一つ。
全否定する俺に納得したのか、秀人は「なーんだ」と、残念そうに呟いた。
「雅通に彼女できたんなら、彼女経由で誰か紹介してもらおうと思ってたのに」
「どーせそんなこったろーと思ったよ。次回の合コンに期待しな」
そんな言葉に、フンと鼻を鳴らした秀人は紙コップに入ったコーヒーに口をつけようとして、そういえば、 と思い出したかのように呟いた。
「・・・・合コンといえば話変わるけどさぁ、雅通、ケンゴと会った?」
「ケンゴ?そいや、最近会ってないな。俺とアイツ取ってる授業ほとんど違うし」
「そっかー」
「なんかあったのか?」
秀人は頭をポリポリと掻きながら、困ったように小さく肩を竦めた。
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