馬車組

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「ちょっと待って。一つ聞いていい? この馬車の運賃って幾ら?」 「3リーブルよ」 アルラが答えると、おばちゃんはさっと険しい表情を浮かべ、ラフトの方を振り返った。 「ラフトン。手持ちは幾ら?」 ラフトは急に思い出したかのように、慌てて財布の中を覗く。 「8リーブルちょっと…。手配した馬車は前払いだったし…。ここで交通費が掛かるとは思っていなかったから…。ううっ。宿泊代を払うと、馬車代はそんなに出せないです!」 「馬車で前払い? そんなの詐欺に決まっているじゃないですか! そんなんだから、ラフトさんはちっともお金が貯められないんですよ」 ノルトが呆れ返った表情を浮かべて言う。 すると、おばちゃんは突然両の手で、頬をパシパシッと叩いた。どうやら気合いを入れているらしい。 虎直は窓から身を乗り出し、御者に向かって叫ぶように声を掛けた。 「なあ、おっちゃん! 運賃さ、もうちょっとだけ安くできへん? さっき通りかかった馬車の運賃が2リーブルやってんけど、もし運賃が3リーブルなんやったら、この馬車降りて、次の馬車待つわー」 ーーおばちゃんが値切りに成功したのは言うまでもない。 そして、思いがけない乗客が二人増えた馬車は、再びゆっくりと動き始めたのであった。
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