4人が本棚に入れています
本棚に追加
【温泉は皆がいいね】
ルリの送迎で一気に温泉のある村の手前の林道まで飛んできたランバートは、どうにもスッキリしなかった。
それというのも、出かけに見せたお留守番のミラが、どこか寂しそうな顔で「いってらっしゃい」と手を振っていたのだ。
まだ幼いミラは時々、年に似合わない気遣いを見せると思う。大人の中で生活してきたからかもしれない。
今回もきっと、不参加のウラウを気遣ったのだろうと思う。
「……」
「ランバートさん、妙な顔してます」
動き出さないランバートを、同じくルリ送迎組のヒロト、セキレイ、オリーブ、ファウストが怪訝な顔で見ている。
「ごめん、忘れ物した。取りに行ってくる」
「え? 忘れ物ですか?」
「ランバート?」
「ごめん、直ぐ戻るから待ってて」
そう言うと、ランバートはルリに頼んで宿泊先の教会へと戻っていった。
ルリにひっそり頼んだ到着地点では、寂しそうに外を見るミラと、どこか都合の悪そうなウラウがいた。突然現れたランバートに、二人ともとにかく驚いた顔でしばらく言葉が出てこない。
それをいいことに、ランバートは側のミラを片腕に抱き上げた。
「きゃ!」
「おい!」
ウラウは立ち上がり、威嚇するようにきつい目で睨み付けてくる。だが次に、ランバートはそんなウラウの首根っこも素早く引っつかんだ。
「なにをするんです!」
「いいから。ルリちゃん、しゅっぱーつ♪」
状況も何も説明することなく、ランバートはそのままルリに同じ林道へと飛んでもらった。
最初のコメントを投稿しよう!