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林道で待っていた一同は、あっという間に戻ってきたランバートの腕にミラとウラウがいる事に驚いていた。
「ただいまー」
「お前、忘れ物って」
「そ、この二人」
ウラウの首を離し、ミラを下に降ろす。状況が理解できないミラは辺りを見回しながら、ランバートを見上げた。
「温泉?」
「そっ、来たかったんでしょ?」
「でも…」
そう言ってミラが見るのは、ウラウだった。ウラウも状況が理解できたのか、戸惑ったりしながらもミラの視線から逃げるように視線を外している。
「ミラちゃん、小さいうちに沢山楽しい思い出を作った方が、素敵な大人になれるよ」
「え?」
「それに、温泉は体にいいんだ。怪我が早く治ったり、疲れが取れて元気になるんだよ。ウラウもきっと、早く良くなるよ」
「本当!」
途端に輝いた幼い瞳は楽しみというばかりではなく、ウラウを案ずる気持ちも過分に含まれているようだった。
そのウラウの肩を、ファウストが苦笑しながら叩く。
「彼女の為に一肌脱げという事だ。一応保護者なら、少しくらい付き合ってやれ」
「…別に、保護者ってわけじゃありませんし」
そう言いながらも落ち着かなく尻尾が揺れている。耳もさっきから、忙しく動いている。その様子に、皆が微笑ましく笑った。
「まぁ、いいです、来ちゃいましたし。それに、体が早く治るっていうなら俺にもメリットありますから」
「ほんと、ウラウは素直じゃないな」
ほんの少し赤くなりながらもぶっきらぼうに言ったウラウの手を、ミラが嬉しそうに握る。そして、輝く笑みを浮かべた。
「行こう、お兄ちゃん!」
ミラの元気な号令に、改めて少し離れた温泉地へと、皆は出発するのだった。
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