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【おばちゃん参戦】
「待ってー! うちらも乗せてーっ!!!」
絶叫する虎直が、猛牛の如く馬車に向かって突進していく。
「ちょっとお! 虎直さん! 俺たちは二人乗りの馬車を別に手配しているんですよ!
何勝手に他の人の馬車に乗り込もうとしてるんですか?」
その後ろから息も絶え絶えに走って追いかけるひ弱そうな男子、ラフトは、必死に大声を上げて虎直を止めようとする。が、もちろんそんなことで止まるおばちゃんではない。
「その二人乗り馬車がいつまで待っても来おへんから、うちらはまだ出発出来てへんねんやろ!!」
虎直は後ろを振り返りもせずに言い返すと、速度を落とす馬車に向かって跳躍し、窓枠に手を掛けて車にしがみついた。
馬車の中の一同は、揃って呆気にとられた表情をしている。
おばちゃんはにんまりと遠慮のない笑みを浮かべて言った。
「うちら温泉に行くつもりやったんやけど、もう一時間以上待ってんのに馬車が来おへんねんやんかー。
もし行き先が一緒やったら、私たちも連れてってくれへん?」
いきなりおばちゃんが問う。
しかし、こんな勢いで突っ込んで来られて、どうやって断れというのか。
ラフトは息を切らして馬車に駆け寄ってきた。
「いや、みなさん、ホントすみません。お騒がせして…って、ノルトさん?」
「ラフトさん?」
ノルトは目を丸くして虎直とラフトの顔を交互に見、それから苦笑して口を開いた。
「どうやら、お互い、召喚した相手に恵まれなかったみたいですね」
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