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本当の嘘
19歳の春、忘れられない恋をしたーーー。
それは、私の意思で私が決めたこと。
だけど、幾度も後悔した。
どれほど涙を流しただろう。
それでもこれで良かったんだと言い聞かすのだ。
この選択のお陰であの人に会うことができたのだと。
そう思うしかなかったのかもしれない。
そして初めて、母の言ったあの言葉の意味がわかった。
大学生だったあの頃、今までにないくらい泣いた。
それ以上に幸せだったと思う。
それから8年が経った。
あの頃よりも強くなった。あの頃のように、あれほど泣きたい夜も少なくなっていった。
「どうしたの、美佳。そんなため息ついちゃって。」
「どうしたも…私、てっきり由依が先に結婚すると思っていたのに!あの20歳年上の彼氏さんと…。」
「そんなに嘆くこと?あの時は私もまだガキだったんだよ。」
そう言いながら、私はカフェラテに砂糖を混ぜた。
私の真正面に腰掛けるのは、高校、大学と一緒だった親友だった。
「それにしても良い雰囲気のカフェね。」
「話を変えない!」
親友の松原美佳はむっとした表情を浮かべた。
「無理だったのよ、やっぱり…。私の両親は決して許さないわ。」
「20歳は離れすぎてるって言われたんだっけ…?」
私はその言葉に小さく頷いた。
「でも、それだけじゃないの…。」
「何か他に問題でも…?」
心配している彼女の言葉に、思わず涙を流れてしまいそうだった。
必死に耐えて、私は笑った。
「うん。でも昔のことよ。」
美佳はますます悲しそうな表情になった。
(ダメね、私。ちっとも隠せてない。もう忘れると決意したのに…。)
「だけど、もう一度彼に会えるなら、私は今度こそ彼のそばに…。」
そう言って思わず涙が流れてしまった。
それを見た美佳は彼女も私に抱きついて泣いた。
(最初から知っていたのにね。私と彼の恋愛は悲劇だって。)
(知らず知らずのうちに好きになっていたのね、私…。)
親友の胸の中で、私は過去を洗い流すかのように泣いた。
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