プロローグ

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その後、私はバーへ赴いた。 辛い時、悲しい時に訪れるのだ。 高校の時からの親友が経営している。 「いらっしゃいま…って由依か。どうしたの、あんたがまた来るなんて何かあったのね?」 少しふくよかなマダムが私を出迎えた。 彼女は、高校の時、同じ部活だった。 最も、高校生の頃は彼女は男性だったのだが…。 「ちょっといろいろ思い出してね。」 「分かったわ、当ててあげるわ。また甥っ子にババアって言われたんでしょう?」 「ちがーう!…いえ、違わない。確かにそれも悲しいわ…。」 「冗談よ。」 そう言って彼女はくすくす笑った。 「ほら、言ってごらんなさい。」 私は彼女に、先ほどの美佳とのやりとり、そして彼のことを話した。 「なるほど…。普通のカップルだったらやり直しなさいと言えるけど、あんたはそうじゃないものね、由依…。」 「ひらりん…。」 「だから言ったのよ、いくら占っても由依とあんたの元カレは相性が良かった。彼はあんたのことを愛していたのよ。それに、あんたの仕事で出会ったんでしょう、手放すべきじゃなかったのよ。」 「私も、そう、思う…。でもお母さんは許さないわ!」 ママはそうねと言って、私の頭を軽く撫でた。 「今度会った時は、もう少し自分の気持ちに素直になりなさいよ。あんたたちの未来には、避けられない不幸があるでしょう、でもあんたの気持ちはずっと前から決まってるんでしょう?」 「うん…。」 私は涙を拭うと、笑った。 「よし、いいわ!今日はワタシの奢りよ!」 「いいの、ひらりん!じゃあバーボンロックで!」 「やっぱり由依はその方が似合うわよ。それより、ここではママとお呼び!」 「はぁい、ママ」 ママの本名は平本幸也。大学の時、いろいろあって女性として生きている。だから彼をよく知る人たちは、幸子と呼んでいる。 幸子とお酒を酌み交わし、思い出話に花を咲かせていた、ちょうどその頃だった。
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