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僕はこの街のメインストリート的な場所に来ている。
わずか数百メートル、
潰れた映画館とバーが5、6件、
ハイスクールは関係ない。
そんな通りのカフェに通っている。
だが僕はコーヒーが嫌いだ。
胃がキリキリする。
飲み過ぎてバーストした日の翌日みたいな内臓になる。
それでもマスターに注文する。
「アイスコーヒーをおくれ。」
「…ブラックかい?」
「もちろん。」
混ぜると吐いてしまう。
そしてこのマスターも嫌いだ。
全てを見透かしていて、
何故この店に通ってるかも知っているだろう。
そのくせ質問はしっかりする。
…剛田くんも骨川くんもやめてくれよ。
店に昭和的な扉の鐘の音が響く。
直感で僕は振り向く。
ロングヘアにワールドブランドとビンテージを程よくミックスしたナウい服、
見惚れてしまう唇、
吸い込まれる瞳、
主張し過ぎない細身のスタイル。
今日は彼女に連絡先を聞いて、
次へ進むんだ。
マスターとは仲が良さそう…。
少しジェラシーを感じてしまう。
「…アイスコーヒーだよ。」
グラスには黒い液体が入っている。
少しグラスを回し、
波紋が無くなった時、
歪んだ自分の顔が映っていた。
良くない予兆か?
そんなもん一気に飲んでやる。カンッ!
飲み干して彼女に近づく。
「すみません、
初めて見た時から気になっていて、
携帯とか連絡先を聞「いいよ。」
思ったよりすんなり交換した。
ゲームだとレベル1でラスボスを倒すようなものか?
「…あの娘の知り合いかい?」
マスターが口を開く。
「いいえ、
初めて話しましたよ。」
さっき聞いてたろ?
「それなら手を出すのをやめなさい。」
ふざけんなよ。
「何でそんなことを言うんですか?」
「君のためだ。」
「僕のためなら…」
「あれは私の一人息子だ。」
「はっ…?」
「一人息子だ。
傷付く前にやめなさい。」
「ごちそうさま。」
代金をカウンターに置く。
気が気じゃない。
僕は何をやってんだ。
コーヒーもマスターもマスターの息子も嫌いだ。
「地球上の人間全て、
僕みたいな目にあって下さい。」
願い事をしてしゃがみ込んだ。
くそっ!
その時、
ピロンッ
携帯が鳴った。
(初めまして。
連絡先聞かれてビックリしちゃった!
これからよろしくね!
いつ遊びにいこうか?)
僕の携帯はメインストリートを飛び越えた。
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