7 野犬襲撃!

11/13
前へ
/481ページ
次へ
「と、とりあえずやってみるか。っていうか、やらなきゃ、殺されるな……」  手のひらをかかげたイェンの手が、イヴンに強く握りしめられる。  何か言いたげに、目顔で首を振るイヴンに、イェンは背後に立つエーファを軽く振り返り、だってしょうがないだろう、と肩をすくめる。  イヴンの傷口に手をかざし、その手に意識を集中させるようにまぶたを閉じる。イェンの眉間に深いしわが寄った。徐々に手のひらから淡い光が発光する。 「貴様っ! やればできるではないか! 出し惜しみをするな」  エーファは目を輝かせた。が、イェンとイヴンを見守ること数分。次第にその顔に不審なものが滲んでいく。 「イヴンの様態が悪くなっていくように見えるのは、私の気のせいか?」  訝しげに問うエーファの口調は冷ややかだった。先ほどまで、そこそこ元気だったイヴンの様子があきらかにおかしいのだ。ひたいに汗を浮かべ苦しそうに息を吐いている。 「あ!」  イェンは素っ頓狂な声を上げやべえ、と頭をかく。 「俺ってば、反対にこいつの生気吸いとっちゃってたよ」  術、間違えたみたい、と妙に血色のよい顔でイェンは、はははと笑う。  エーファは握りしめたこぶしを小刻みに震わせた。 「何か旅の疲れが一気にとれたって感じ?」
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

545人が本棚に入れています
本棚に追加