541人が本棚に入れています
本棚に追加
時刻はいまだ、十一時五十九分のままだった。
きっと、いろいろなことが片づき、落ち着きを取り戻したら、新たな時を刻み始めるだろう。
「今回はほんとに大変じゃったの」
声をかけられ振り返り、さらに視線を落としたそこに、大魔道士パンプーヤがちんまりと立っていた。
相変わらずぼろ切れをまとった姿だ。
「じじいは何もしてないだろ!」
そう言ったイェンは露骨に顔をゆがめた。
何故なら、パンプーヤの右手には杖、左手には剣。
「何じゃその態度は。杖がなくては不便じゃろうと思って、こうして新しいのを用意してやったというのに」
剣はいたって普通の剣だったが、いかんせん杖の方は以前よりも悪趣味度が増した。
「今度のは白金製じゃ。柄の部分には滑り止め。さらに耐久性抜群じゃぞい」
杖の形も装飾も、もはや口にするのもためらわれる品のなさであった。
最初のコメントを投稿しよう!