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そこへ、二人の間に頭がそそっと割って入ってくる。
「いやいやいやいやー。兄きにはツェツイーリアちゃんという、かわいい恋人さんがいるから、これ以上モテても困るんですよね」
「ああ?」
イェンは腕を組み、半眼で頭を見下ろす。
ちなみにツェツイは、まだお師匠様の側にいたいと泣きながらごねていたところをイェンに説得され、数日前にディナガウスへ戻っていった。
いつか必ずヴルカーンベルクの〝灯〟へ行きます! と言って。
「おまえも何で、あたりまえのようにここにいるんだよ」
「いやいや。兄きの付き人としてヴルカーンベルクへ一緒に行くって言ったじゃないですか。仲間もそれぞれの道を歩き出したことですし。うむ。兄きもこれから忙しくなるだろうから、身の回りのことはすべてお世話させていただきますぜ」
「そんなこと許可した覚えはねえし、自分のことは自分でできるし、忙しいっていっても俺は今までとかわらねえし、側にいられるとうっとうしいから消えろ」
「でも俺、実家がヴルカーンベルクなんですよ」
「はあ?」
「それに兄きはイヴンくんの側近としてヴルカーンベルクに宮廷入りするんですよね? だったら、なおさら付き人の一人くらいいてもいいんじゃないですか? あ、次はヴルカーンベルクが舞台の『王子様と落ちこぼれ宮廷魔道士』ですか?」
「……」
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