終章

10/18
533人が本棚に入れています
本棚に追加
/481ページ
「ふむ。では、おまえさん専用の次元に送っておいてやろう」 「おい、勝手なこと……!」  杖の押しつけ合いをする二人を横目に、イヴンはリプリーと向き合った。 「ここでお別れね」 にこりと笑い、右手を差し出してきたリプリーの手に視線を落とす。 「イヴンに会えて本当によかった。大変なこともあったけど、楽しかった」  ためらった後、リプリーの手を握り返す。 イヴンの胸につきんと、痛みが突き抜けていった。  結局、リプリーたちは別の手段でヴルカーンベルクへ行くと言い出した。  ずっと旅をして、ワルサラの国の問題にもつき合ってくれて、本当に大変だったけど、楽しかった。  いつか来る別れのことも忘れてしまうくらいに。 「僕も……リプリーに会えてよかった」  それだけを言うのが精一杯だった。  ちゃんと笑って、ありがとうと言ってお別れをしなければいけないのに。
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!