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「ふむ。では、おまえさん専用の次元に送っておいてやろう」
「おい、勝手なこと……!」
杖の押しつけ合いをする二人を横目に、イヴンはリプリーと向き合った。
「ここでお別れね」
にこりと笑い、右手を差し出してきたリプリーの手に視線を落とす。
「イヴンに会えて本当によかった。大変なこともあったけど、楽しかった」
ためらった後、リプリーの手を握り返す。 イヴンの胸につきんと、痛みが突き抜けていった。
結局、リプリーたちは別の手段でヴルカーンベルクへ行くと言い出した。
ずっと旅をして、ワルサラの国の問題にもつき合ってくれて、本当に大変だったけど、楽しかった。
いつか来る別れのことも忘れてしまうくらいに。
「僕も……リプリーに会えてよかった」
それだけを言うのが精一杯だった。
ちゃんと笑って、ありがとうと言ってお別れをしなければいけないのに。
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