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イヴンはきつく口を引き結ぶ。
ふいにリプリーはイヴンの首に手を回し、頬に軽く唇を寄せた。
そして顔を赤らめ、一歩二歩と後ろへさがる。
「また会いましょう」
胸の辺りで小さく手を振り、リプリーはくるりと背を向け歩き出す。
あっさりと去っていくリプリーの背中をじっと見つめ、イヴンは口元を震わせた。
ぽろりと、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「またなんてないのに」
杖の押しつけ合いに決着がついたのかイェンが側にやってきた。
いつの間にかパンプーヤの姿もない。
「何? 泣いてんの? だったら、追いかければ?」
「そんなことできないの知ってるくせに!」
「俺にあたるなよ……」
「コケ……」
さよならなんて嫌だ。
ずっとリプリーと一緒にいたい。
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