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鉢植を受け取り、笑みをほころばせる少女の足下から突如、ふわりと風が吹き上がる。
レイラの花をまとう七色の夜露が、突然吹いた風に乗って舞い上がり、軌跡を描いてゆらゆらと星空へと昇っていく。
少女とイヴンはきらめく光を目で追い、空を見上げる。
薔薇の香りにも劣らない、レイラの花の甘い香りがふわりと鼻腔をくすぐった。
「どんな贈り物よりも、いちばん嬉しいわ!」
「喜んでもらえてよかった」
イヴンはほっとしたように息を吐く。
「イヴン様?」
受け取った鉢植えを抱きしめて、少女はイヴンに顔を寄せ、その頬にちゅっとキスをした。
「大切にするわ。ありがとう」
「え、え……え?」
たちまちイヴンは顔を真っ赤にさせうろたえる。そんなイヴンを見つめ、少女も頬を染めくすりと笑った。その横で、イェンは苦笑いを浮かべている。
そして、十年後。
よもや、その王女様の元へ婿入りすることになろうとは、この時イヴンはまったく予想もしなかったであろう。
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