Close your eyes and count ten.

2/3
前へ
/25ページ
次へ
「もう行くよー」  ピアノのレッスンの時間が近づいていた。わたしの呼ぶ声に娘たちはめずらしく一度で従い、駆け戻ってくる。 「ママ」 「なあに」 「あのね、枯れ葉で遊んだの。さっきいた子とその子のパパと」 「あのサングラスかけた人?」 「うん。ここにおっきなお怪我があった」 「おばあちゃんは?」 「おばあちゃん、少しへんだけど作ってくれるごはんは美味しいって言ってたよ」  次女はわたしの問いに無関係な返事をした。  すぐそばの木でかくれんぼが始まって、鬼になった男の子が数をかぞえている。  いーーち、にーーい、さーーん、よーーん、  一緒に遊んでいることは遠目に見ていたので、帰り際に一声挨拶したかったのだが、父子も祖母らしき人もみつけられない。  ごーー、ろーーく、なーーな、はーーち、 「お友だちはもう帰った?」  わたしは娘たちにきくが、下の娘はやはりわたしの質問にはこたえず、言った。 「あのね、あの子のパパが急に倒れて、りおと、おねえちゃんと、三人で埋めたのよ」 「葉っぱに?」 「うん」  男親の遊びはときに、とても大胆だ。汚れても気にならない服を着ていたとしても、わたしは枯葉に埋められるなど、お断りだ。三人で公園の出口に向かう。 「楽しかったね。遊んでもらえてよかったね」 「……」  歩きながら言うが、わたしは娘たちの様子に異変を感じていた。さっきから上の娘が何も言わないのだ。 「あのね」 「なあに」  もーーいーーかい、  まーーだだよ  小学生くらいの男の子数人が、私たちを追い越していく。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加