第1話 小鳥よ飛び立つのよ 編

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 20時半を過ぎた頃、私は電車に揺られていた。  みんな真剣な眼差しで、ケータイをいじっている。  ──ケータイ……か。  タクミ、あれから連絡ひとつなかったな。本当に私の事、好きじゃなかったんだ。  もしかして、朝になったら気が変わって、連絡でもあるんじゃないか、なんて期待したのを思い出して惨めになった。  あ……降りなきゃ。  仕事の疲れもあってか、ぼーっと歩いていたらすぐに『咲』に到着した。  なんか変な事に巻き込まれちゃったけど、今の私には丁度良いかもしれない。何か新しい事に夢中になりたい……。恋愛なんて、もういいって、なれるくらいに。  時計は21時5分になるところだ。  ちょっと遅れちゃった……戸田課長もう居るよね?
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