978人が本棚に入れています
本棚に追加
/186ページ
第1話 小鳥よ飛び立つのよ 編
次の日、私は戸田課長を探した。コーヒーを飲んで一休みしている時を狙って、話しかけた。
「あの、戸田課長……きのう……」
「子羊ちゃんの、めぇ子君だね」
「やっぱり……」
「めぇ子君、君は真面目に仕事しているのかい?」
「はい?も、勿論です!」
「いぃ~や!していない!うちの試作品を見逃すなんて……そんな浮ついた気持ちでいるから、そうゆう大事な事を……」
うんたらぺんたら
うんたらぺんたら……
戸田課長のお菓子への熱意は良く分かった。
「戸田課長はオカマというか……えっと、そう言う事……なんですか?」
戸田課長はコーヒーを飲み干し、目を細め、眉間に皺をよせて私を睨みつけるように見下ろした。
「男でも女でもいいじゃないか。それが君の人生に、何か障害を与えるのかな?」
「い、いいえ、別に……そんな壮大な問題ではないのですが、気になって……」
「うん、それならば君には関係ない事だ、気にしなくていい。だがしかし、君に頼みがある」
──だがしかし?!
「は??いえ、なんでしょうか?」
「咲はオカマBAR兼、人生の悩み相談室でもあるんだ。咲に来る客は、何かしら悩みを抱えている。今、一件の頼み事があるのだ、それを君に頼めないか?」
「ん?なんですか?何でも屋みたいな事もしてるんですか?」
「何でも屋……うん。そうだな、そのようなもんだ。その悩みは、君なら分かる気がするんだ。その依頼、受けてくれないか?」
「はぁ?ちょっと意味分からないですけど、どんな……依頼なんですか?」
本当に意味分からないし、なんで私なのよ?
最初のコメントを投稿しよう!