第1話 小鳥よ飛び立つのよ 編

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第1話 小鳥よ飛び立つのよ 編

 次の日、私は戸田課長を探した。コーヒーを飲んで一休みしている時を狙って、話しかけた。 「あの、戸田課長……きのう……」 「子羊ちゃんの、めぇ子君だね」 「やっぱり……」 「めぇ子君、君は真面目に仕事しているのかい?」 「はい?も、勿論です!」 「いぃ~や!していない!うちの試作品を見逃すなんて……そんな浮ついた気持ちでいるから、そうゆう大事な事を……」  うんたらぺんたら  うんたらぺんたら……  戸田課長のお菓子への熱意は良く分かった。 「戸田課長はオカマというか……えっと、そう言う事……なんですか?」  戸田課長はコーヒーを飲み干し、目を細め、眉間に皺をよせて私を睨みつけるように見下ろした。 「男でも女でもいいじゃないか。それが君の人生に、何か障害を与えるのかな?」 「い、いいえ、別に……そんな壮大な問題ではないのですが、気になって……」 「うん、それならば君には関係ない事だ、気にしなくていい。だがしかし、君に頼みがある」  ──だがしかし?! 「は??いえ、なんでしょうか?」 「咲はオカマBAR兼、人生の悩み相談室でもあるんだ。咲に来る客は、何かしら悩みを抱えている。今、一件の頼み事があるのだ、それを君に頼めないか?」 「ん?なんですか?何でも屋みたいな事もしてるんですか?」 「何でも屋……うん。そうだな、そのようなもんだ。その悩みは、君なら分かる気がするんだ。その依頼、受けてくれないか?」 「はぁ?ちょっと意味分からないですけど、どんな……依頼なんですか?」  本当に意味分からないし、なんで私なのよ?
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