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「手合わせくらいならやっても構わないが……」
「本当っスか!!」
ラモラックがそう言うと、キリクはすぐさま反応を見せ、小躍りを始めるんじゃないかというくらい喜んでいた。
「ここじゃあれだ。中庭に」
「どっちスか!? 早く行くっス!!」
ラモラックの腕を掴み、場所も分からないのにキリクは早く早くと駆け出していく。
そして、場所が分からないのだから、当然のように違った方向へと向かう。
「そっちじゃない」
半ば引っ張られるような形で、キリクについてきたラモラックは、道を間違えたキリクを止めようと腕を引っ張る。
「……!?」
引っ張ったはずだが、キリクは止まらなかった。
それよりも、何よりもキリクを止められなかったことに違和感を感じる。
腕を掴まれたまま違う場所へ。
「えー、っと……ここはどこっすスか??」
倉庫のような場所に行き着き、キョロキョロと辺りを見回すキリク。
ようやく止まり、掴まれた腕を離したので、ラモラックは一つ息を吐く。
「ここは倉庫だ。お前は反対側に向かっていた」
「そ、そうなんスか!?」
「ついてこい」
キリクに先導させては一生たどり着かないかもしれないと思い、ラモラックはついてくるように手招きをした。
「ッス!」
嬉しそうに返事をし、ラモラックについていく。
「そういえば、お前は……」
「なんスか!?」
話しかけたラモラックの言葉を遮り、キリクは返事をする。
「……お前は力が強いのか?」
先ほどキリクの腕を引っ張ったのにびくともしなかった事を思い出した。
ラモラックの質問に少し考えてから、キリクは口を開いた。
「普通だと思うっス。俺はこれが普通だと思っているんスけど……」
「いや、さっき行く方向を正そうと、お前を引っ張ったんだが……」
俺はどちらかというと力は強い方なんだが……、とラモラックは一言付け加えた。
「引っ張ってたんスか!? 夢中で気づかなかったっス。それは、申し訳ないっス」
やってしまったと言う顔をしながら、キリクは後頭部に手を置き、頭を下げる。
「気にしてはいない」
「っ……! さすがラモラック心が広いっス!!」
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