プロローグ

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だいぶ深く斬られた。 あれほどまで血が流れているとは。 ラモラックは自分自身が手酷い傷を負っていることを知る。  「卑怯者共め、不意打ちをし、一人に対してこの人数とは……騎士として恥ずべきだ」 両足を負傷し、この傷の深さ。 実力は誰も彼もラモラックよりは下だが、多勢に無勢。 逃げられないことを確信する。 最早、口をついて出る言葉は数人で囲み、背中から斬りつけたガウェイン達をなじるしかできない。  「恥ずべきは貴様の方だラモラック。貴様は生まれてからすでに罪に満ちている」 あくまでも罪を問おうとするガウェインをラモラックはエメラルドグリーンの瞳で睨み付ける。 馬上槍試合で疲れていなければ。 追われていると知っていたのにロット一族の前に出て来なければ。 そんな思いを巡らせながらガウェインを見る。 ガウェインの茶色い瞳がラモラックを見つめていた。 その瞳は何処か、何かを憂いているように見えた。 親の仇を討とうとしているのにその表情はない。 憎しみに満ちた目で、恨むような形相で、鬼気迫る感情を露にしてもおかしくないのに。 その表情はアグラヴェイン、ガヘリス、モードレッドには見えていない。
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