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『おっとぉー!!駒選手サッカーボールが頭に直撃!これは痛い!』
突っ立っているだけでボールもろくに追えない奴がテレビにずっとうつっている
そう、もうサッカー選手もお金さえはたけばなれるようになってしまった。
運動のできない小学生レベルの男は、しかし金がある。いまやスポーツ界のトップスターだ。
そんなに物の価値を悪くしたらお金の価値だって変わるだろうに。
でもそこは場所によっては力を注ぎこみ、というか本当に金とかではなく才能のある人間に金を集めるようにちゃんと仕組んだおかげで、金が散らばり金持ちのくせにケチるやつ、才能あるくせに貧乏なやつ、というのが五万といた以前より、うまく巡回させるようになってしまった。
結果、周りの生活は豊かになっている。作家やスポーツ、夢を与える世界に夢がなくなっただけで。
喫茶店でぼぉっとする。私は今やすっかり無趣味だ。昔は漫画とかゲームとか好きだったんだけどなあ……。
なによ、お金がなければ夢も見れやしないじゃない。
ろくに稼がなくても生活できるくらい保険も豊かになったからいいんだけどさ
ただ細々と誰にも注目されず生きていけたら、それでいいわけ?
レジの方で、店員のエプロンを引きずった幼女が『68…900円です!!』とかいっている。客はその動作の遅さにイライラしているようだが、隣のベテランそうな店員の彼女がいかに金持ちかを聞いている間に逆らってはいけないと眉間のしわをどこかにどかしていた。
夢、夢……かあ。
「久しぶりだな舞香」
眼鏡がなくなり、コンタクトになった
幼馴染の日浦。大学卒業以来だ。といってもあんま時間経ってもいないのだが、以前よりぐっと光輝いて見えた。
「日浦ァ!」
「な、なんだよそんなに会いたかったの?」
「いやそういうわけじゃないけど」
「……なんだよ」
むすっとした顔がカワイイ。ざっと適当に木の椅子を引き、日浦はチャイを一つと店員に頼む。
「っはぁーい!」と手をあげる幼女。
頼むからお前は運んでこないでくれよ。
そう念を送る。
「ん?どうした睨んで お前子供嫌いだっけ?」
「い、いや好きだよ」
なんとなく、好きな男の前で子供嫌い!!とは言いづらい。
「でもさ、やっぱ時と場所てものがあると思わない?あんな幼い子を働かせるなんて」
心配そうあくまで私は心配してるんですよ、て体(てい)で。
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