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時間もそろそろいい頃だ。
喫茶店をでて、なんとなく解散が寂しく散歩をした。
住宅街を見ているだけで、どういう家に住もうか?というような気分になれて
私は好きだ。道路の端で時折猫がうごめいている。空が、もうすぐ暗くなる夜の霧をかけていった。
「あ、あのっ、今日は私のほうから呼び出してごめんね、なんか学校一緒じゃないとわざわざ会おうって感じじゃなかったもんね
で、でも私実は……もっと普段から会いたいの」
「……俺もだよ」
どきん、どきんと心臓が高鳴る。
「あのさ……俺 舞香」
え、顔が近い。もしかしてもう告白って感じかな
どうしよう?でも私と日浦の付き合いは十年以上、これは十年以上期待したシーンなんだ。
できればプロポーズはもっと良いレストランとかそういうのがいいなあ。
こんな時折ちりりん、とママチャリが通ってくようなとこじゃなくて。
それに日浦なら心広いし、狙っている女子もいない。
このプロポーズ一回目くらいちょっと渋ってみせちゃおうか。
それで次のデートをとりつけて、スカイツリーあたりにいって前回渋ったのはね私のほうから告白したかったからなのとかいって喜ぶ顔をみるプランもいいかも
よし、そうしよう。プロポーズが路上でしたとかいうよりロマンチックだ。
「好きなんだ」
「うーんちょと考えさせて」
空気がぴしっと固まる。あ、やばいそっけなさすぎた?
違う違う小悪魔的なじらし方がいいの
てかこれ失敗したらこのまま機会のがして破局になっちゃう?
それならロマンチックなんて捨てた方がいいかなあ。
ああ、でも、女心もわかってよ……!幼馴染なんだから!
そんな無責任な葛藤で渦巻き黙っている私は
本気で断ってるように見えてしまっただろう。
途端、日浦の目からは光がなくなり。そうか
とつぶやいて早足に帰ろうとしてしまった。
「やっぱ金がないと付き合ってなんてもらえないよな」
追いかけて、うそうそ私も同じ気持ち!と言おうとした私の手が固まる。
「金がないとなあ……金だよなあ……」
空が、暗くなってきた。
カラカラカラカラ……。どこかで自転車のタイヤが空回りしている。
私は、世界と夢の終わりを感じていた。
end
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