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夢の叶え方
それは私が大学の頃からの変化であった。
私の大学では常にブランドものに身を纏い全身で総額いくらか考えるだけでも恐ろしく、2席離れていてもフランスのブランド香水が香る女が居た。
その女は、大学とは思えないほど自由がなく、かじりついてノートに書き込み頭を抱える者たちとは違い、授業中は真っ赤なネイルについたラメをぼんやりと眺めているだけであった。爪を右に左に揺らして、ぴかぴか、ぴかぴか
なにが楽しいのか。いや、暇なんだろう。
私は、幼馴染の日浦に話しかける。
「ねえ、あの子。なんであんなに余裕なのかな
実は頭いいとか?そういう風にはまったく見えないんだけど」
「いやあ、頭悪いでしょ」
「じゃあなんでこの学校に入れたのよ。東大ほどではないけど、難関校よ」
「裏口入学だよ」
裏口入学。合格ラインぎりぎりの人が、より多くお金を積む事で入らせてもらえるとか
実際は都市伝説のように、まっさかぁと思える手段だ。だから私はまっさかぁという顔をしていたのだが、あの女が此処にいる意味
確かに不正か裏口としか考えられない。
「なんだ舞香、お前知らなかったのか」
私の名前が呼ばれる。
「そもそも受験もしてなくても一億おさめたらこの学校入れるように制度が変わったんだぞ。そのことを裏口入学ってまだ呼んでるけど
そのうち正当なものに変わるらしいよ。恥でもなんでもなくなる。そんな時代がくるのさ
まあ、金持ちがそうやって落としてくれるおかげで、食堂豪華になったりしてるしね」
日浦はそう言い切った。冗談をいっている顔ではなかったし、こういう冗談をいうタイプでもなかった。そっかあ、学校や塾以外でも、あんだけ泣きながら風呂で英単語を読み漁って電車は揺れに耐え歴史を叩き込んだ、あの時間は一億だせるならポンと買えてしまうのである。
「でも安心しろよ舞香。大学ってのは、ゴールじゃないんだぜ。社会にでて必要とされるのは
ちゃんと勉強してきてるやつの方だよ」
「そ、そう!そうだよね」
やっぱ、そういう風に励ましてくれるから日浦が好きだ。
清潔な短髪にちょっとでかい黒ぶち眼鏡。外せばそこそこ格好いいことを、幼馴染の私しか知らない。原石のような男子……いや、惚気ている場合ではなく、裏口入学についてに話を戻すけど、学校は単なるブランド名ではない。
これが結論だ。
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