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あるルポライターの手記
これは、私の日記のようなものである。見たもの、聞いたものをただ書き連ねただけの、なんの意味もない文章である。
発端は、ひとつの噂話だった。いわく、その地には「天使」がいるという。
それを知ったのは、三年前だった。私は当時、ローカル誌に小さな連載をもつルポライターをしていて、ライター仲間が集まる飲み会でその噂を聞いたのだった。
「天使」には、羽がない。
「天使」は、言葉を話さない。ただし相手の心を読む。
「天使」は、人間と接触すると傷を負う。
「天使」は、なにかを待っている。
「天使」が待っているのは、「終末」である。
ひどくうさんくさい上に酒の席での話なので、私はそのときその話をすぐに忘れた。
そして私は実際に、その「天使」と出会うことになった。
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