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ファンタジーRPG的な
勇者と魔王の存在する、よくあるお話。
僕は勇者ではない。
ただの魔法使いだ。
勇者になりたくて小さい頃から剣の練習もした。
でも才能は無かった。
何より、体力がなくてすぐに息切れを起こしてしまっていた。
代わりに魔法は人より少しだが、得意だった。
最初に覚えた魔法は雷撃放射だった。
静電気程度の弱いものだったが、伝承にある勇者の、その象徴とも言える雷撃を扱えた。
そんな事で幼かった僕は喜んだ。
憧れの勇者になれるんだと。
しかし、結果を見れば勇者からは程遠い。
伝承の勇者は剣術、体術、魔法の全てに優れ、更に世界中を旅する中で色々な人の願いを叶えたという。
それに比べて自分は。
剣も碌に扱えず、体術も使えず。
得意な事と言ったら鍛え続けた雷撃と、それなりに使える他属性の魔法。
それでも中級魔法が精一杯で。
伝承の勇者が桁違いの存在なのだと実感した。
それでも勇者の夢を諦められずに旅に出ようと決心した。
伝承の通りでは無くても、と。
同じ道を辿らずとも、別の道からでも、と。
未練がましく、淡い期待を抱いて。
扉に手を掛けつつ。
「さぁ扉を開けて、冒険を今始めよう…なんてな」
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