助手席の女

1/2
前へ
/2ページ
次へ

助手席の女

 帰宅途中に立ち寄ったコンビニで友達とばったり会い、車で来ていたそいつに家まで送ってもらうことになった。  駐車場に向かうと、友達が自分の車に歩み寄る。その際、助手席に女性が乗っているのが見えた。  見たことがない女性だが、多分友達の彼女か女友達だろう。単純にそう思い、俺は後部座席に乗り込んだ。  すぐに車が動き出したが、友達は女性のことを紹介しないし、女性の方も自己紹介をしてくる様子はない。  普通ならこういう時、友達が俺に助手席の女性を『彼女』とか『女友達』とか紹介し、また相手にも、俺のことを友達だと紹介するものだろう。  でもそういった動きは一切ない。  人に教えたくない間柄なのか。でもそれならば、俺を車に誘ってくるのは妙すぎる。  一つ一つは些細だが、どうしても沸いた疑問が消せなくて、俺は友達に助手席の女性は誰なのかと尋ねてみた。 「助手席に女? 何の冗談だよそれ」  そう返事をしながらミラー越しに俺を見る友達は、心底意味が判らないという顔をしていた。 「え? だって、コンビニで乗れって言った時からずっと、助手席に女の人が座ってるじゃん」  そう言い終わると同時に凄まじい勢いでブレーキが踏まれた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加