助手席の女

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 友達が助手席を見ながら何度も目をこする。でもそこに座る女性が見えていないかのように、ひたすら首をかしげるばかりだ。 「女が、乗ってるって…? マジで?」 「うん」  返事をすると同時に友達は悲鳴を上げて車から飛び出し、どこかへ一目散に走り去ってしまった。  その後、どんなに携帯に電話をかけても繋がることはなく、俺は随分迷ったが、車をその場に放置したまま帰宅した。  それから半月ばかりが経過して、他の友達経由で、あの日逃亡した友達が警察に出頭したことを聞いた。  なんでも友達は、俺とコンビニで会ったあの前日、飲酒運転で女性を轢いてしまい、そのまま現場から逃げ去っていたらしい。幸いにも女性は一命を取り留めたが、友達が出頭するその日までずっと意識不明だったそうだ。  どうやら自分を轢き逃げした人間に、ずっと憑りついていたということらしいが、どうしてそれが俺に見えたのかは謎のままだ。  多分友達は悪質な轢き逃げ犯として、暫く交通刑務所に入ることになるだろう。でも、あのままずっと被害者に憑りつかれ続けていたら、恨みの思いでとんでもない事故が起きたかもしれないから、これでよかったんだと思う。  人間、罪を犯したら逃げ出さず、きちんと償わないといけないっていうことだな。 助手席の女…完
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