茜の恋

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茜の恋

茜は4時頃の列車に乗っている。 目に留まる景色は賑やかな街並み。 通り過ぎていく景色の中に母校に似た校舎を目にした。 流れ去ってゆく景色のように、懐かしくも 照れくさいような数々の思い出たちが記憶の中を走る。 夏の窓からは風に乗って歓声が聴こえ、 風に揺れる白いレースのカーテン。 淡々とした授業の内容に耳を傾けるけれど、 外の様子に集中力を向けたりしてどちらも途切れ途切れになる。 隣に座るクラスメートは、小さな紙に伝言を書いては 友へと渡し、次へ次へ。 先生が注意をする…… どれも三年間のうちの たった一瞬の出来事なのに、 卒業をし今では積み重ねて来た一日が自分の宝物だった。 そんなことを思い出しながら笑みをこぼしていると、 ふと、その頃想いを寄せていた彼の姿が現れた。 蒼という名の、先輩だ。 ただ遠くから見てるだけで良かった。 懐かしさが胸をきゅんと痛めつける。 それが私の初めて好きになった人だった。 物思いにふけっていると、一つの駅に停まった。 がやがやと話し声が聴こえる雑踏の中、 少し離れたところに誰かが座る気配を感じる。 彼らの話し声はそれほど大きくはなかったけれど、 私の耳まで届く。     
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