茜の恋

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聴こえない、聴こえない、聞いてない聞いてない…… 〈んーーー、でも、凄く気になる!〉 「大学で、新しい男探せよ」 「な、なにそれ……」 「別に、俺たちそんなに……」 「…………」 「お互いに好きっていうんでもなかったし」 「…………」 「俺、知ってたよ。お前が、俺の他に 好きなやつ、いるって」 〈え、何?〉 女の子の方が一方的に別れ話されてると思ったけど 彼女には、彼女なりの原因があったのか…… そう言えば、蒼言ってたな…… 俺の彼女になる子には、 ちゃんと俺だけを好きでいて欲しい。 じゃないと、俺は自信持って前へ進むことなんて出来ないって。 私は蒼のことしか見えてなかったし、 蒼も私のこと……そうなんだと思ってた。 ……蒼が先に卒業する時、 学校が離れるから不安だけど、 俺は俺で頑張るから、茜も楽しくやれよって…… その時、その意味がよくわかってなかったけれど、 お互いに連絡をしなくなって、自然消滅みたいになって。 なんだかこの二人……私と蒼に似てるな。 自分の初恋の思い出と、 嫌でも聞こえてくる二人の話し声が重なる。 「蒼の馬鹿!」 唐突に聞こえて来た、今考えていた人の名。 〈え、まさか……〉 蒼、本人なの?嘘でしょ……? そう言えば、声も懐かしいなって……思った。     
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