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この別れ方も、なんか……
そわそわして、少しだけ腰を浮かせて、
あの二人を盗み見る。
「……!」
私は音を立てずに、声を抑えてその場に
隠れるようにして小さくなった。
蒼、本人だ。
一気に私の鼓動は速まって、
呼吸するのもやっとなくらいに痛む。
「ど、どうしよう……」
いやいや、どうしようたって、
別にどうしようもないじゃない。
私がここにいるって蒼はわからないんだから。
それにしても、
大学生になっても尚同じ理由で終わりにしようとしてるんだ。
高校二年の時感じた切なさが、
今の彼女が感じてるだろうそれよりも強く私を覆い尽くす。
けれど、不思議と私の顔には笑みが浮かんでいた。
悲しいとか、苦しいとかじゃない。
そんな恋をしていた、高校生の頃の私……。
幼かった恋に翻弄された自分が、
なんだか妙に心を優しいものへ変えていく。
列車はまだ私の行く駅まで走り続けてる。
雑踏に紛れながらも聞こえてきた二人の声は
それ以上、私へは届かなかった。
ただひたすらに、この先の駅で待ってくれてる
悠陽の笑顔が目の前に写っている。
―――― 早く悠陽に逢いたい。
高校生の淡い恋を越えてあなたに出会った。
今の私がいるから、あなたに出会えた。
私の小さな初恋は、
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