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沈黙の時間が続く度
君は慌ててグラスに口をつけ
彼の話を繰り返す。
愛おしそうにエンゲージリングを回しながら。
そんなことが聞きたい訳じゃない。
お願いだから、今だけは
私に君の時間を
君の全てをくれないか。
こんなこと、愛しい君に言えるはずもなく
私はただ無言で、最後のタバコに火をつけた。
「やめてくださいって言ってるのに」
アルコールで桃色に染まった首元を見ていると、
君がつぶやく。
「たばこ」
このタバコを吸い終わったら、やめるさ。
その代わり、今日はどこか遠くに行ってしまわないか。
そんなことを考えながらも
必死で君の終電時間を計算してしまう。
後、30分。
弱い男だと言ってくれてもいい。
こうやって、いろんな口実がなければ
君を縛れない人間だ。
私が伝えられることはただ一つ。
幸せに、なりなさい。
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