理想と現実の狭間の二人

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「ズルい女だって思うかもしれないけど、その残った二つの事柄を天秤にかけてみた…」 そう言った途端、詠美は大粒の涙をポロポロ流し始めた。 その涙に自分が一番驚いたような顔をして、泣き笑いをしている。 「そしたらね… どうやら重さが同じみたいで、どっちにも傾かないの… だから、私はどっちかを選ぶのを止めた… どっちも選ぶ… だってどっちも大切で、私が愛して手離せられない人なんだもん…」 詠美は抱き寄せるミンジュンの顔を見て、また泣いた。 だって、ミンジュンも泣いていたから… 「乗り越えられない壁はない… 大きくそびえ立つ壁も、よくよく見たらそれは壁なんかじゃないかもしれない… ミンジュンさんのお母さんの言葉は、私の背中を押してくれた。 自分達が作り上げている壁であって、もしかしたら砂の壁かもしれない。 その壁は簡単に崩れて、その先には本当の未来が待っているのかもしれないって」 詠美は急に水の蛇口をひねった。 「熱くなってきたね… のぼせる前に、ちゃんとミンジュンさんに伝えておきたいから、ごめんね…」 ミンジュンはジャブジャブ流れてくる水を見て思わず笑った。 詠美ってこんな時でも面白い…
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