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ミンジュンが韓国へ帰って三か月が経った。
その間に寒くて冷たい冬は過ぎ、もう春の陽ざしが東京を包み込む。
ミンジュンは元旦の午後に、突然、詠美の実家にやって来た。
急に一日が暇になって、朝の飛行機に飛び乗って東京へ来たという。
でも、翌日の朝の飛行機で戻らなきゃならないという弾丸スケジュールだった。
浅草の正月は、お店にとっては一番の書き入れ時だ。
でも、お父さんと美沙おばちゃんは、大好きな詠美の幸せのために休みにしてくれた。
ミンジュンはいつものように変装をして、浅草の街を歩く。
でも、あまりにも人が多過ぎて、誰もミンジュンに気付かない。
二人で初詣を済ませて、夜は詠美の家で食事をして、そして詠美の狭い部屋に一緒に寝た。
でも、ミンジュンは、大切な事は何も言わない。
愛してるよとか、会いたかったとか、気持ちの上での素敵な言葉はたくさん言ってくれるのに、二人の未来の話は何もしてくれない。
詠美もそんなミンジュンに何も聞く事はしなかった。
ミンジュンの中でどんな事が起こっているのか考えたくない。
今日、こうやって私に会いに来てくれたミンジュンの笑顔だけで満足したい。
そうじゃなきゃ、怖くて前へ進めないから。
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