第1章

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第1章

 たとえ何を犠牲にしてもこの身体朽ちるまで研究を続ける。  そう言った部下は先日死んだ。  確かちょうど午前一時をきったところだった。薄暗い廊下の角を曲がると床の上にボールのようなものがあり、邪魔だと思いながら蹴飛ばしてから違和感に気付いて懐中電灯で照らしてみるとそれはボールではなく生首だった。あの強さで蹴ったから間違いなく鼻が折れたなと考えたおよそ五秒後にようやく脳が危険信号を出した。  ――何だ、これは。  呆れたことにまず第一に彼の頭に浮かんだのは廊下に血が滴っているので掃除は誰にやらせようかということだった。私は断る。時間の無駄だ。 「生首蹴っ飛ばすシチュエーション、漫画の中だけだと思ってました」    そして第二は――お前は誰だ?  研究員は足を止めて廊下の奥に立つ男を凝視した。不用意に近づくのは危険だ。  男は声からして二十代くらいだろう。親しい人間に会ったように明るい声は不気味なほど『不自然ではなかった』。
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