第1章

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 だが殺人鬼が身を離した直後、一歩後ろによろけたヴァイスの首からナイフが落ちた。何故か刃は消失している。 「ありゃ?」  ラットは不思議そうに首を傾げたが別段驚いた様子もない。 「俺は殺せねぇよ、ド低脳が」 「刃どこ行きました?」 「種明かししてほしいか。仕掛けが分かっちゃ面白くないだろう?」 「いーじゃないですかー。私もやって驚かせたいんですー」 「お前がやったら死ぬぞ。残念ながら俺は不死身なのでな」 「不死身?」  途端にぽかんとした顔になった殺人鬼を科学者は馬鹿にしたように笑う。 「未だ誰も成し遂げたことのないことを俺はいとも簡単に成功させた。科学が発展したこの帝都でも不死の力を手に入れたのは俺だけだ」 「結婚してますか?」 「話聞けドブネズミ! だいたいどこから結婚の話になるんだ!」  婚約指輪などしてないぞ、と吐き捨てたヴァイスはそこで意味深げに笑みを浮かべたラットに気づく。
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