バチ当たりロンリー・デイズ

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 今までずっと、世間を踏み付けて生きてきたことは自覚している。多分、これからもそう生きて行くのだろうことも。  中学1年の頃、クラス担任の車を金属バットでタコ殴りにした。気に入らない中年男だった。成績最下位の奴に同情するような教師だ。200人の学年で蒸発した5人を除いて195位だったおれは柔道部の幽霊部員で、顧問からも他の部員からも軽蔑されていた。中学に仲のいい奴は、一部のどうしようもない落ちこぼれ仲間を除いてほぼいなかった。つまり、そこらの真人間を殴り倒すだけの動機は十二分にあったわけだ。何年か一度に茶の間のワイドショーを賑わす少年・Aの仲間入りを果たす寸前だったおれは、担任のハゲ頭を叩き潰す直前に標的をそいつのオデッセイに切り替えた。急に馬鹿らしくなったから。14歳の心理なんてそんなものだろう。そうして1ヶ月停学を喰らって学校に戻ってきた時には、おれはすっかり危険人物になっていた。  他にもある。高校2年の時、喧嘩になったチンピラの目を潰した。金髪のチビだった。おれより15センチ以上背が低い。駅前のセブンで吠え掛られたから、首を押さえて飲み物コーナーに投げると、奴の頭はいとも簡単にウィンドウを突き破った。崩れ落ちた金髪は泣き叫び、血みどろの両目を押さえて絶叫する。失明。最寄りの交番で取調べを受けたが、警察官の親父の名前を出したらすぐに釈放された。過失なし。チンピラは前科もちの札付きだったらしく、所轄のおっさんには感謝され、ラーメンをおごってもらった。懐かしい話だ。  人生なんてこんなもんなんだろう。生暖かい日本社会では働かなくても死にはしない。気が付けばメシは食えてるし、衣食住には困らない。夏場なら橋桁の下で寝ても快適だ。ここは糞だまりだが気候も良好、遊ぶ金もどこでなりと稼げる。刺激も快楽も程よく転がってて、親父ともそれなりに上手くやっている。こうやってずっと気楽に生きていくつもりだった。生まれ育った生暖かい故郷、神戸沖に浮かぶ人工島、ニューポートアイランドで。
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