571人が本棚に入れています
本棚に追加
「身体を起こせるか?」
「……」
「タクミ?」
「っ……は、はい」
本能がこの男に逆らうなと警告した。彼の眼がそうさせたのかもしれない。明らかに一般人とは違うその眼に、タクミは委縮した。だが彼を怒らせたくはない。タクミはすぐに起き上がると、足を床に投げ出し、ベッドに腰掛けた。
「大丈夫か?」
「……はい」
思いの外優しいその声に、タクミは伏せていた視線を上げる。正面から男を見るがその顔に覚えはない。彼は自分を知っているようだが、タクミには見当がつかなかった。この男はいったい誰なのだろう。
疑問が顔に出たのか、男はタクミの髪を一撫でし、言った。
「俺は高崎だ」
「たかさき…さん?」
「ああ、久しぶりだな」
高崎はそう言ってタクミに微笑んだが、やはり彼に覚えはない。不安と警戒心からタクミは距離をおこうと身を引くが、それよりも早く高崎の手がタクミの黒い首輪を掴んだ。
「よく似合っている」
「……っ」
「飼い犬にはお似合いだな」
「俺は飼い犬なんかじゃない……!」
タクミは首輪を掴む高崎の手を振り払った。その行動に高崎は不思議そうな顔をしたが、何かに思い当たったのか、喉を鳴らして嗤った。
「そうか……まだ、そこまでしてないのか」
「?」
「まあ良い」
高崎はタクミのシャツの合わせ目を握り、一気に引き裂いた。弾け飛んだボタンがベッドや床に飛び散る。引きつれたような痛みに、タクミは顔をしかめた。
高崎はタクミの胸のピアスを指し、言った。
「これは元からか? それとも、あいつの趣味か?」
「……無理矢理着けられた」
「成程」
ピアスによって強調された突起を刺激しながら、高崎は続けた。
「反応している」
「やめっ、あぁ……っ」
タクミは高崎を押し返そうと両腕を動かすも、スーツの下に隠された強靭な肉体はビクともしなかった。
最初のコメントを投稿しよう!