五章 激情と死骨

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 弟が産まれた時タクミはまだ二歳。もちろん当時の記憶は無いが物心つく頃にはお兄ちゃんと呼ばれる立場になり、タクミは幼いながらも「弟を守るんだ」という責任感を持つようになった。 「にいちゃ」  弟に初めて呼ばれた時は嬉しかった。すぐに父と母に報告した。そうしたら母は「良かったね」とタクミの頭を撫でてくれる。また嬉しくなって、タクミは小さな弟の身体をぎゅっと抱きしめた。  ある日の休日。タクミは母に連れられて近所の公園に遊びに行った。もちろん弟も一緒だ。平日は幼稚園に通うタクミは休みの日でないと弟と目一杯遊べない。 「行こうマコト!」  タクミは弟の手を引いて駆け出した。向かう場所は砂場だ。ここならまだ幼い弟とも一緒に遊べる。タクミは砂場の中央を陣取り、反対側に弟を座らせた。 「見てろよ」  足元の砂で山を作り、その頂上に木の枝を刺す。兄弟の間には小さな隔たりが出来た。タクミは枝を指して言った。 「先にこれ、たおした方が負けだからな」 「うん!」  目を輝かせて返事をした弟は、タクミが止めるより早くごっそりと砂を取り、山の大半を崩してしまった。しかしそれだけ砂山を崩しても頂上の枝はビクともしない。 「ずるいぞマコト。なんでそんなに取るんだよ!」  先を越されてムキになったタクミは、弟に負けじと砂を取った。足場を失った枝は簡単に倒れてしまう。勝敗が分かったのか弟は嬉しそうな顔をして「兄ちゃんの負け」と言った。
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