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目を覚ましたタクミは、ただぼーっと天井を見つめていた。マコトに監禁され凌辱されるようになってから、もうどれだけ経ったのか分からない。ただ着実に体力も精神力もすり減っていた。
マコトがいない間は寝ていることが多い。一日に何度も夢を見て、目が覚める度にここが夢なのか現実なのかを確かめる。だがたとえ夢から覚めたとしても、待っているのはあの男に犯されるという現実だけだ。いっそこのままずっと目覚めなければいいのに。
そんなタクミのささやかな願いは今日も叶わない。だがタクミを現実に引き戻したのは、聞き覚えのない男の声だった。
「お前がタクミだったのか?」
男が自分に何かを尋ねている。だがタクミはまだ夢の中だと思っていた。現実世界で弟以外の声を聞くことなんて、もうないのだから。反応を示さないタクミに、男は先程よりも距離をつめて話しかける。
「俺のことを覚えているか、タクミ」
不思議な夢だ。声と共に頬に触れられている感触すらある。弟以外の人の手は心地良い。その手は何度か頬を撫でた後、ポンポンと軽く叩いてタクミの覚醒を促した。
「起きろ、タクミ」
その言葉に呼ばれるようにタクミは重たい目蓋を持ち上げる。と同時にある異変に気づいて、声がする方向を見た。声の主は黒いスーツを身に纏った三十代半ばの男だ。一見どこにでもいそうな普通の男だが、彼の眼がそれを裏切る。その仄暗い瞳でタクミを見据え、口の端をわずかに上げて男は笑った。
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