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「……何で顔隠すの?」
頭上から声が降ってくる。静かだが怒りを伴う声色だった。
「俺、怒ってないよ。それとも何? 俺に怒られるような事でもしたの?」
「……勝手にすればいい」
タクミは膝に顔を埋めたまま告げる。マコトの気配が険悪なものになったとしても、もうどうでもよかった。
「どうせ俺に選択肢なんかないんだ……っ、とっとと犯ればいいだろ!」
「何ムキになってるの? 言ってることおかしいよ」
「ふざけやがって……っ、くそ……!」
「落ち着きなよ兄さん。どうしちゃったのさ」
正面に膝をついたマコトの腕に抱きこまれる。その大きな手は背後に回り、子供をあやすように一定のリズムでタクミの背をポンポンと叩いた。今までは自分が弟であるマコトにしていた行為なだけに、その行動はタクミの神経を逆撫でした。
「……早く挿れたいんだろ、マコト」
タクミは埋めていた顔を上げ挑発的にマコトを睨みつける。その言動に呆気に取られたマコトは一瞬硬直し、それから大きな笑い声を上げた。
「ははは……っ!」
弟は狂っている。ここ最近は特に感情の起伏が激しく、また抑鬱状態が酷い。そしてそれを冷静に受け入れる自分自身も、どこかおかしい。もう以前のように笑うことは出来ないだろう。
「はーあ」
ひとしきり笑ったマコトはタクミに軽く口づけ、蕩けるような笑みを浮かべる。
「久しぶりに名前呼ばれたな。しかも何? その言い方。もしかして拗ねてる?」
「……」
「そんなにヤリたいならするけどさ、さっきまであの人に遊んでもらってたじゃん。まだ足りないの?」
高崎の手つきを思い出して身体の奥がずくんと疼く。一度忘れた熱が再びタクミの肉体を苛んだ。
「……足りないみたいだね」
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